個人事業主として事業を営む中で、「固定資産税は経費にできるの?」「自宅兼事務所の場合はどう処理すればいいの?」といった疑問を抱えている方は多いのではないでしょうか。
固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有することで発生する税金ですが、個人事業主の場合、事業用として使用している部分については経費として計上することが可能です。しかし、単純に全額を経費にできるわけではなく、適切な条件や家事按分のルールを理解し、正しい仕訳方法で処理する必要があります。
また、固定資産税以外にも家事按分できる経費や、個人事業主が活用できる軽減措置についても知っておくことで、より効率的な税務処理が実現できます。
この記事では、個人事業主が知っておくべき固定資産税の基礎知識から実践的な処理方法まで、分かりやすく解説していきます。適切な経費処理により、税負担の軽減と健全な事業運営を目指しましょう。
1. 個人事業主が知っておきたい固定資産税の基本

個人事業主にとって、固定資産税は経営上考慮すべき重要なコストです。この税金は、土地や建物などの固定資産を所有することによって発生し、事業活動を行う上で避けられないものです。以下では、固定資産税に関する基本的な知識や概要について詳しく解説します。
固定資産税の性質
固定資産税は保有する固定資産の内容に基づいて課税されます。具体的には、次のような資産が対象となります。
- 土地: 所有する土地に対して、毎年課税される。
- 建物: 事業用に使用している建物も含まれる。
- 償却資産: 業務で使用する機械やパソコンなども課税対象となる場合があります。
個人事業主は、これらの資産を用いてビジネスを展開しているため、課税対象となる資産が多いことが一般的です。
税率と評価額
固定資産税の税率は地域によって異なりますが、日本全国で一般的に1.4%程度とされています。ただし、一部の自治体ではこの税率を上回る場合もあります。その計算方法は以下の通りです。
- 評価額の決定: 地方自治体が定期的に固定資産の評価額を見直し、その価値を算出します。
- 税額の計算: 評価額に税率を掛け算し、最終的な納付税額を確定します。
固定資産税の納付方法
固定資産税は通常、年に一度の納付が求められますが、一部の自治体では分割払いも可能です。また、納付期限は毎年定められているため、スケジュール管理が欠かせません。納付方法は以下の選択肢があります。
- 口座振替: 銀行口座から自動で引き落とし。
- 窓口納付: 指定された金融機関や役所での直接納付。
- オンライン納付: 一部の自治体ではインターネットを通じて納付が可能です。
個人事業主としては、納付期限をしっかり守ることが大切です。遅延すると延滞金が発生するため、注意が必要です。
固定資産税の経費計上とその注意点
個人事業主は、固定資産税を経費として計上することができますが、そのためには一定の条件が付随します。経費として認められるのは、事業用に使用している部分だけで、個人的な利用に関しては経費として計上できません。このため、以下の点に留意する必要があります。
- 家事按分の実施: 自宅を兼ねた事務所の場合、事業用と私用の使用割合を合理的に算出し、経費に計上できる部分を特定することが重要です。
- 文書管理: 固定資産税の請求書や支払明細書を整理し、正確な記録を保管することが必要です。
このように、固定資産税は個人事業の運営において非常に重要な側面を持ちます。正しく理解し適切に対処することが求められます。税に対する知識を深化させ、計画的に管理することで、より健全な事業運営が実現できます。
2. 固定資産税を経費にできる条件と家事按分のルール

個人事業主がその事業に関わる固定資産税を経費として計上するには、いくつかの大切な条件を把握することが必要です。特に、自宅を業務に利用している場合や、私的な利用と業務が交差しているケースでは、注意が求められます。
固定資産税を経費に計上する際の基本条件
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業務利用の割合を明確にする
固定資産税を経費として認識するには、その資産がどの程度業務に使用されているかを具体的に示す必要があります。たとえば、自宅の一部をオフィスとして利用している場合、その時の業務用利用面積を正確に評価することが重要です。 -
証拠書類の管理
固定資産税を経費として申告する際には、納付書や領収書などの証明書類をしっかりと保管しておくことが不可欠です。このような書類があれば、税務調査に際して支払いの証明を行うことが可能です。電子保存する場合は、電子帳簿保存法に基づいて適切に管理することも求められます。 -
計上基準の設定
個人事業主としては、業務にかかる支出と私用の支出を明確に区分けする基準を定める必要があります。「合理的な基準」を設けることで、ビジネスに関連する経費のみが認められるようになります。
家事按分(かじあんぶん)の重要性
自宅をオフィスにして活動する個人事業主にとって、固定資産税を「家事按分」ルールに従って経費計上することが求められます。以下に家事按分において注意すべきポイントを挙げます。
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按分基準の設定
使用面積や利用時間に基づき、合理的に按分比率を定めます。具体的には、自宅内のどのぐらいの面積が業務に使われているかを測り、その割合に応じて費用を分けることが重要です。 -
青色申告と白色申告の違い
青色申告を選ぶと、家事按分に対する制約が比較的緩やかですが、白色申告の場合は、業務用スペースが50%以上でなければ按分が認められないため、申告形式によって経費計上の条件が異なることに留意が必要です。 -
決算時の処理
按分計算をもとに、決算時にはその結果を仕訳として処理することが可能です。この手続きにより、事業経費と私的支出を明確に区別することができます。
これらの規則をきちんと理解し、適切に運用することが、個人事業主としての税務処理を円滑に進めるためのカギとなります。自宅をオフィスとして活用されている方は、これらの条件をしっかり把握し、計画的に経費を管理することが求められます。
3. 固定資産税の正しい仕訳方法と勘定科目の使い分け

個人事業主にとって、固定資産税の適切な仕訳及び勘定科目の使い方を理解することは極めて重要です。誤った処理を避けるために、ここで紹介するポイントをきちんと把握しておきましょう。
固定資産税の仕訳方法
固定資産税は、実際に支払った日やその金額が確定した時点を基にして経費として計上されます。ここでは、代表的な二つの仕訳方法について詳細に見ていきます。
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固定資産税支払日に経費を計上する方法
– この方法では、支払いが行われた都度、経費として記録します。例えば、固定資産税の額が10万円でそれを四回に分けて支払う場合、それぞれの支払日には経費処理を行う必要があります。 -
固定資産税の額確定日に経費を計上する方法
– この方法では、固定資産税の金額が決定した時点で全額を経費として計上します。賦課決定書が届いたタイミングで、その金額を「租税公課」として仕訳し、未払金として記録します。その後実際の支払いを行います。
勘定科目の使い分け
固定資産税を経費として計上する際に利用する主な勘定科目は「租税公課」です。ただし、資産の種類や契約条件により別の科目を活用することも可能です。
- 租税公課
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固定資産税を含む事業に関連する税金全般をカバーする基本的な勘定科目です。法人では全額が対象ですが、個人事業主の場合は事業に使用した分のみを計上することに注意が必要です。
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地代家賃
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賃貸物件を利用する際、借主が負担する固定資産税にこの科目が使用されます。経費として計上される部分を賃料として取り扱うことがあるため、契約内容に基づいた明確な区分が求められます。
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仮払金
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固定資産税の支払いについて内容が不明な場合、一時的に「仮払金」として計上します。その後、具体的な内容が判明した時点で、適切な勘定科目に振り替え処理を行います。
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建物
- 不動産を新たに取得した際に発生した固定資産税は「建物」勘定に計上します。この場合、税額は経費として扱うのではなく、資産の価値に組み込まれることになります。
注意点
個人事業主が固定資産税を計上する上で、以下の点に特に留意することが重要です。
- 自宅兼事務所のケースでは、事業用途に使っている部分だけを経費として計上しなければならないため、家事按分の正確な処理が必須です。
- 固定資産税がかかる事業用建物には、必ず適切な勘定科目を用いることが重要です。
- 資産を取得する際に発生する固定資産税も、正しく資産として計上する必要があります。
このように、固定資産税の正しい仕訳方法や勘定科目の明確な使い分けには、しっかりとしたルールと注意点があります。自分自身の事業環境に応じた正確な処理を行うことは、税務調査の際にも極めて重要です。
4. 固定資産税以外で家事按分できる経費とは

個人事業主にとって、固定資産税は経費の中でも特に重要な項目ですが、実際には他にも家事按分が可能な経費が存在します。ここでは、個人事業主が押さえておくべき具体的な経費を詳しく解説します。
地代・家賃
個人事業主が業務を行うために必要なオフィスや店舗の家賃については、業務に利用している面積に応じて経費として認識することが出来ます。計算方法の具体例は以下のとおりです。
- 全体面積 : 例えば、オフィスの広さが50m²で、月の家賃が12万円だった場合。
- 業務用面積 : この中で20m²を仕事に利用しているとすると、業務比率は40%になります(20m² ÷ 50m²)。
- 経費計上額 : したがって、12万円 × 0.4 = 4万8,000円が経費として計上されることになります。
このように、正確な面積を基に計算することが肝要です。また、自宅を仕事場として使用している場合も、同じような家事按分の方法が適用可能です。
水道光熱費
水道光熱費も、業務での使用割合に基づいて経費として計上できる項目になります。具体的な計算は下記の通りです。
- 使用率の計算 : 例えば、自宅で150時間業務を行った場合、1ヶ月の合計時間(720時間)に対する割合を算出します。
- 使用率 = 150時間 ÷ 720時間 ≈ 20%
- 経費計上額 : 毎月の水道光熱費が1万円の場合、経費計上できる金額は1万円 × 0.2 = 2,000円です。
この計算では、実際の業務にかかる時間を反映させる合理的な基準が必要とされます。
通信費
通信費も同様に、業務で使用する分を按分して経費にすることが可能です。具体的な計算方法は次の通りです。
- 業務での使用日数 : 例えば、1週間の中で4日間を業務に使用した場合、その割合は約57%(4日 ÷ 7日)になります。
- 経費計上額 : 月額の携帯料金が1万円で、業務利用が70%とすると、7,000円(1万円 × 0.7)が経費として計上されることになります。
このように、通信費についても現実の業務使用状況に基づいて計算することが必須です。
その他の経費
さらに、家事按分が適用可能な経費には以下の項目が含まれます。
- 車両費 : 業務に利用する走行距離に基づき計上でき、個人的利用と業務利用をしっかりと区別することが重要です。
- 業務用消耗品 : 書籍や文房具の購入時は、事業に関連する部分のみが経費として認められます。
これらの経費においても、実際の業務活動に即した形で正確に按分を行い、合理的な基準を適用することが不可欠です。このようにして、個人事業主は経費を正しく管理することで、効率的な経営を実現できるのです。
5. 個人事業主が使える固定資産税の軽減措置・特例措置

個人事業主にとって、固定資産税の軽減措置や特例は、経営の効率を高めるために非常に重要です。ここでは、個人事業主が活用できる具体的な税制優遇について詳しく解説します。
中小事業者等が利用できる軽減措置
「中小事業者等による生産性向上のための設備に関連する固定資産税の軽減措置」は、新たに導入した設備に対して特例を適用する制度です。この優遇を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 先進的な設備に基づく認定を受けていること
- 認定を受けた年から3年間、固定資産税が軽減される特典が提供される
対象となる設備は、2018年6月6日から2023年3月31日までの間に設置されたものでなければなりません。
固定ゼロの拡充・延長
「固定ゼロの拡充・延長」は、中小企業や個人事業主が新たな投資を進める際に利用できる特例です。この適用には次の条件が求められます。
- 自治体からの認定を受けること
- 投資後、3年間固定資産税が0またはその半分に軽減される
この制度は多くの地方自治体で導入されており、特定の機械や器具、備品が対象として認められます。
固定資産税等(土地)の負担調整措置
「固定資産税等(土地)の負担調整措置」は、土地の評価が急激に上昇した際に適用され、税負担を和らげる重要な施策です。この措置により、税額の急激な増加を抑え、適切な税負担を維持することが可能となります。
新築住宅に係る税額の減額措置
新しい住宅を取得した場合に適用される固定資産税減額の特例もあります。具体的な内容は以下の通りです。
- 一般住宅については、固定資産税が3年間半額に
- マンションの場合は、5年間の減額が適用されます
この特例は2024年3月31日までの新築に限られているため、注意が必要です。
耐震改修に関する特例措置
耐震性の向上を目的とした改修工事にも、固定資産税の減額特例があります。特定の耐震基準を満たす工事を行うと、翌年度の固定資産税が最大50%減額される可能性があります。
省エネ改修に関する特例措置
省エネルギーを目的とした改修を実施する際には、一定額の税額控除が適用される特例があります。これにより、経費削減と環境意識の向上を同時に実現できます。
個人事業主が利用できる固定資産税の軽減措置や特例措置は多岐にわたります。自身の事業状況や適用条件を確認し、これらの制度を積極的に活用することで、税負担の軽減を図り、事業の安定性を確保することが可能です。
まとめ
個人事業主にとって、固定資産税は大きなコストとなりますが、様々な軽減措置や特例が用意されています。自身の事業内容や資産の状況に応じて、適切に経費計上や家事按分を行い、さらに利用可能な税制優遇策を活用することで、固定資産税の負担を最小限に抑えることができます。これらの対策を通じて、個人事業主は健全な経営基盤を築くことができるでしょう。固定資産税への理解を深め、効率的な税務管理を実践することが、安定した事業運営に不可欠といえます。
よくある質問
固定資産税を経費として計上する際の条件は何ですか?
個人事業主が固定資産税を経費として計上するには、その資産がどの程度業務に使用されているかを明確にし、証拠書類を適切に管理することが重要です。また、合理的な基準に基づいて業務と私用の支出を区分する必要があります。
自宅を兼ねたオフィスの場合、固定資産税の経費処理はどのように行うのですか?
自宅兼オフィスの場合、事業用部分の面積や利用時間に応じて固定資産税を家事按分する必要があります。この按分比率は合理的に算出し、正確に記録する必要があります。申告形式によっても経費計上の条件が異なることに注意が必要です。
固定資産税以外に家事按分できる経費にはどのようなものがありますか?
地代・家賃、水道光熱費、通信費などは、業務での使用割合に基づいて経費として計上できます。また、車両費や業務用消耗品などについても、事業に関連する部分のみが経費として認められます。実際の業務活動に即した形で正確に按分を行うことが重要です。
個人事業主が利用できる固定資産税の軽減措置にはどのようなものがありますか?
中小事業者等が新しい設備を導入した場合の軽減措置や、固定ゼロの拡充・延長、土地の評価上昇に対する負担調整措置、新築住宅や耐震改修、省エネ改修に関する特例措置などがあります。これらの制度を積極的に活用することで、税負担の軽減が図れます。

