個人事業主として事業を営んでいる方の中には、「新しい分野にもチャレンジしてみたい」「収入源を増やしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。実は、個人事業主は複数の事業を同時に運営することが可能です。しかし、別事業を始める際には、メリットだけでなくデメリットや注意点もしっかりと理解しておく必要があります。
本記事では、個人事業主が別事業を持つための基本的な知識から、開業届の手続き方法、確定申告のやり方まで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。複数事業の運営を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
1. 個人事業主は別事業を持てる?複数事業の基本を知ろう

個人事業主は、基本的に1つの事業に限らず、複数の事業を運営することが可能です。この自由度は、様々なビジネスモデルを模索する上で非常に有益です。以下では、個人事業主がどのようにして別事業を持つことができるのか、その基本について詳しく見ていきましょう。
複数事業はどのように運営されるか
個人事業主が複数の事業を運営する際には、次のような選択肢があります:
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異なる業種での事業展開
例えば、ライティング業務と並行してオンラインショップを構えるなど、異なる業種を組み合わせることが可能です。このような場合、異なる顧客層にアプローチできるため、リスクを分散させる効果も期待できます。 -
同じ業種での多様なサービス提供
例えば、グラフィックデザインとWebデザインを同時に行う場合、顧客の幅を広げ、新たな収入源を得ることができます。この場合、専門性が高まることで顧客からの信頼も増すでしょう。
所得の区分について
複数の事業を運営する際には、それぞれの事業から得る収入の分類が重要になります。一般的に、事業には以下のような所得の種類があります:
- 事業所得:通常の商取引から得られる収入(例:サービス提供料、商品販売額など)
- 不動産所得:アパートや駐車場の賃貸による収入
- 雑所得:原則として副収入や趣味から得られた収入
このように、所得の種類が異なる場合には、それぞれに適した確定申告を行わなければなりません。複数の所得がある場合、確定申告書には各所得の金額を個別に記載する必要があります。
開業届の提出
新たに別事業を始める際には、開業届の提出が必要です。開業届は、税務署に提出することで正式に事業を開始したことを知らせる書類です。そして、複数の事業を持つ場合、各事業ごとに屋号を持つことも可能です。
まとめ的要素を避ける
個人事業主が別事業を持つことは、自由度が高く、経済的な余裕を生む可能性を秘めています。しかし、複数の事業を持つことで義務として生じる確認事項や手続きは多くなります。事務的な手続きを怠らず、現状を整理することが成功への鍵と言えるでしょう。
2. 個人事業主が別事業を始めるメリットとは

個人事業主が新たに別事業に挑戦することには、実に多彩なメリットがあります。以下にその具体的な利点を詳しく解説します。
収入の多様化と安定化
異なる事業を持つことで、収入源を広げることが出来ます。たとえば、メインの事業がうまく行かないときでも、他の事業が好調であれば、全体の収入が維持される可能性が高まります。例えば、コンサルティングを行いながら別のプロダクトをオンラインで販売することで、コンサルティングの依頼が減少しても、商品の売上で差額をカバーできます。
ビジネスチャンスの拡大
異なる事業を運営することにより、従来の業種を超えた新しいビジネスチャンスが生まれる可能性が増します。多様な業界にアクセスすることで、独自のアイデアを生み出しやすくなり、革新が促進されます。例として、飲食業を営む個人事業主が、自身の経験を基に食品系のブログを運営することで、読者の興味を引きつけることが期待できます。
スキルの相互活用
複数の事業を持つことで得たスキルや経験は、他の事業に応用することが可能です。具体例として、Webデザインの技術を持つ個人事業主が、そのスキルを生かして自身のオンライン販売サイトを開設することが考えられます。このようなスキルの相互活用によって、業務の効率や質が向上することが期待されています。
マーケティングの相乗効果
異なる事業を運営すると、各事業のマーケティング施策においても相乗効果が発揮されます。例えば、特定の商品を宣伝するときに、それに関連するサービスの広告も同時に行うことで、両方の事業の知名度を高めることが可能です。同じ市場にアプローチすることができれば、コスト面でも効率が良くなります。
税制上の優遇措置
別事業を持つことで複数の収入源が設けられ、その所得を合算して確定申告を行うことができます。収入の多様性が増すと、場合によっては税務上の優遇措置を享受できる可能性もあります。税金対策や節税手法を駆使することにより、経営資源をより効果的に活用する手助けとなるでしょう。
このように、個人事業主が別事業を開始することには数多くの利点があります。各事業同士が相互に補完しあうことで、ビジネス全体の成長を促進できるため、ぜひこの機会を検討してみる価値があります。
3. 別事業を持つデメリットと注意点も押さえておこう

個人事業主として別の事業を立ち上げることには、魅力的な面が多い一方で、考慮すべきデメリットや注意点も存在します。ここでは、具体的なデメリットについて詳しく見ていきます。
業務の分散と集中力の低下
別事業を持つことで、時間やエネルギーを複数の業務に分散させることになります。これにより以下のような問題が発生しがちです。
- 一つの事業への集中が難しい: 複数の事業があると、どの事業にも十分な時間を確保することが難しくなります。その結果、どちらの事業も中途半端になり、顧客の信頼を失ったり、売上が減少するリスクが高まります。
- 業務の効率が低下する: それぞれの事業で異なる業務プロセスや判断基準を持つ場合、効率が悪化することがあります。このような事態は、場合によってはコストや時間の無駄につながることも。
資金管理の複雑さ
複数の事業を運営する場合、資金管理が特に難題となります。具体的には以下の点が挙げられます。
- 異なる収支の管理: それぞれの事業について収入や支出を別々に管理する必要があるため、帳簿付けが非常に煩雑になります。これにより、確定申告の際にも混乱が生じることが少なくありません。
- 誤った財務状況の把握: 資金が混在していると、どの事業が利益を上げているのかが不明確になり、運営上の重要な判断を誤る可能性があります。
社会的信用の低下
また、個人事業主は法人に比べて社会的信用が薄くなる傾向があります。具体的には以下のような点が影響します。
- 融資の受けにくさ: 複数の事業を営むことで、金融機関からの融資が難しくなるケースがあります。特に、一つの事業が不振であった場合、信用度がさらに下がることがあります。
- 顧客や取引先からの印象が悪化する可能性: 事業の規模感が伝わりにくいため、信頼を築くのが難しくなることが多いです。これにより、取引の機会を失うことがあるため注意が必要です。
法律や規制の理解不足
最後に、別事業を持つ上では法律や規制についての理解不足が大きなリスクとなることがあります。
- 適切な開業届や税務手続きの必要性: 各事業において、必要な手続きを正確に行うことが求められます。これを怠ると、税務署からの指摘や罰則を受ける可能性があるため注意が必要です。
- 業務内容の明確化: 税務調査などでは、事業内容がはっきりしていないと疑念を持たれることがあります。自分の事業が本当に別物であることを説明できるようにしておくことが重要です。
このように、別事業を持つ際には慎重なプランニングと管理が求められます。各事業の個別性や財務状況を常に把握しておくことで、リスクを軽減し、成功へとつなげていくことが大切です。
4. 別事業を始めるときの開業届と屋号の手続き方法

個人事業主として新たに別事業を始めることを検討している方にとって、開業届を正しく手続きすることは非常に重要です。この手続きは、法的な事業の基盤を整える上で欠かせないプロセスです。この記事では、開業届や屋号に関連する具体的な手続きの流れを詳しく解説します。
開業届とは?
開業届とは「個人事業の開業・廃業等届出書」を指し、新しく事業を開始する際には、担当の税務署に提出が必要です。この書類は、事業を開始した日から原則として1ヶ月以内に提出しなければなりません。開業届が受理されることで、あなたの事業は法律上認められ、正式にスタートすることになります。
別事業を始める際の手続き
別の事業を立ち上げる際には、新たに開業届を提出する必要がない場合もありますが、以下の点に注意することが不可欠です。
- 事業内容の記載: 開業届の「職業」や「事業概要」の項目には、複数の事業内容を収入の多い順に具体的に記載することが推奨されます。
- 屋号の登録: 新たな屋号を使用することも可能です。新しい屋号を追加する場合は、開業届の「屋号」欄にそれを記載し、「その他参考事項」には「屋号の追加登録」と明記して提出します。
別屋号の必要性
異なる事業や業種を持つ場合、それぞれに別々の屋号を持つことは多くの利点をもたらします。以下にそのメリットを紹介します。
- 顧客への識別性: 各事業の屋号が異なることで、顧客は何を提供しているのかを一目で理解しやすくなります。
- ブランディングの強化: 特定の業種に特化した屋号を使用することで、その専門性を際立たせ、魅力的な顧客獲得につながります。
提出書類の注意点
新たに事業を開始する際には、開業届の提出時に次のポイントを再確認することが重要です。
- 税務署の確認: 以前に変更がない場合は、元の税務署へ提出することが基本です。
- 開業届のフォーマット確認: すでに開業届を出している場合でも、新しい情報の反映や訂正が必要な場合は、必ず正確に記載しましょう。
- 手続きの期限: 新たな事業を開始する場合は、必ず期限内に手続きを行うよう心掛けましょう。
これらの手続きをしっかりと行うことで、スムーズに別事業を立ち上げることができます。もし不安な点がある場合は、専門家に相談するのも良い手段です。
5. 複数事業を営む場合の確定申告のやり方と節税対策

複数の事業を経営している個人事業主にとって、確定申告は避けて通れない重要な手続きです。初めての方には少々敷居が高く感じられるかもしれませんが、的確な手順さえ踏めば、スムーズに処理することが可能です。本記事では、個人事業主が別事業を持つ際の確定申告の進め方と、賢い節税対策について詳しくご紹介します。
確定申告の基本ルール
個人事業主が複数の事業を展開している場合、基本的には確定申告書は1回の提出で済みます。事業所得に付いては、総合課税を利用することになります。以下のステップで進めましょう。
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収入の合算:
– 各事業から得た収入を一つにまとめます。この時、経費はそれぞれの事業ごとに適切に管理し、正確に把握しておく必要があります。 -
所得の計算:
– 総収入から必要経費を差し引き、事業所得を算出します。各事業の特性に応じて帳簿を別々に作成することが推奨されます。 -
確定申告書の提出:
– 合算した事業所得に基づいて申告書を作成し、決められた期日までに提出します。不動産所得や雑所得がある場合は、同じ申告書で併せて記載します。
各種所得の取り扱い
別事業を運営している際は、所得の種類によって申告方法が異なる場合があります。特に課税形式が異なるときは注意が必要です。
- 事業所得のみの場合: 全ての収入をまとめて申告書に記入します。
- 不動産所得や雑所得がある場合: 各所得について詳細を記載する必要があります。
- 分離課税の所得がある場合: 譲渡所得などは、別に計算し、申告書の別表に記載することが求められます。
節税対策
複数事業を経営する個人事業主にとって有効な節税対策には、以下のものがあります。
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経費の計上:
– それぞれの事業の経費を適切に記録し、税務署に認められる範囲内で経費計上を行うことが重要です。必要経費を増加させることで、課税所得を低減することが可能となります。 -
青色申告の活用:
– 青色申告を選択することで、特別控除や繰越欠損金の活用が可能になり、結果的に税負担を軽減できます。 -
保険料の活用:
– 生命保険や損害保険の保険料を経費に計上することで、課税所得を抑える手段があります。 -
税理士への相談:
– 税専門家からアドバイスを受けることで、自分では見逃しがちな節税ポイントや有効な控除を見つけられます。複数の事業を持つ方は、税理士との連携を強化し、申告手続きや節税対策を進めることで長期的なメリットを享受できるでしょう。
このように、複数事業を経営している個人事業主にとって、確定申告は一見ハードルが高そうですが、基本のルールを理解し、きちんと準備することで、スムーズな手続きが期待できます。
まとめ
個人事業主が複数の事業を運営することには、収入の多様化や新たなビジネスチャンスの獲得といった多くのメリットがあります。一方で、業務の分散や資金管理の複雑さ、社会的信用の低下などのデメリットにも留意する必要があります。別事業を始める際には、開業届の提出や屋号の登録など法的な手続きを正確に行い、確定申告の際には所得の種類に応じた適切な申告を心がけることが重要です。さらに、経費の適切な計上や青色申告の活用など、賢明な節税対策を実施することで、個人事業主としての経営基盤をより強固なものにすることができるでしょう。複数事業を持つ個人事業主には、これらの対策が成功への近道となります。
よくある質問
個人事業主は別事業を持てるの?
個人事業主は基本的に1つの事業に限らず、複数の事業を運営することが可能です。これにより、リスクの分散や新たなビジネスチャンスの拡大などさまざまなメリットが期待できます。ただし、業務の分散や資金管理の複雑化など、デメリットにも注意が必要です。
別事業を始める際の手続きは?
別事業を開始する際は、税務署に新たに「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。この開業届を正しく行うことで、事業が法律上認められ、正式にスタートすることになります。また、別の屋号を登録することで、ブランディングの強化や顧客への分かりやすさが期待できます。
複数事業の確定申告はどうするの?
複数事業を営む個人事業主の確定申告は、各事業の収入を合算して1回の申告で済みます。ただし、所得の種類によっては、分離課税の対象となることもあるため注意が必要です。また、経費の適切な計上や青色申告の活用など、賢明な節税対策を組み合わせることで、税負担を軽減することができます。
別事業を始める際のデメリットは?
複数事業を持つ個人事業主には、業務の分散による集中力の低下や、複雑な資金管理、社会的信用の低下といったデメリットがあります。また、法律や規制の理解不足も大きなリスク要因となります。これらのデメリットを十分に理解し、慎重なプランニングと適切な管理が求められます。

